world music label “panai” -David Darling & The Wulu Bunun 「Mudanin Kata」

by satoshi


ワールド・ミュージックの国内リリースを主な活動とする panai レーベルのご紹介です。自分が絵描きと並行して行っている、いわば音楽部門です。

panaiレーベル3作目の国は台湾。台湾には12もの先住民族が今でも暮らしていて、その中の一部族、台湾中央の山間部に暮らすのがブヌン族。ブヌンとはブヌン語で人という意味です。

彼らの間には複雑な八部合音というハーモニーがあり民俗学や音楽の起源についての研究の中ではそれまでの「楽曲の起源は単音を基調としてより複雑なアレンジに発展していった」という説を覆すものとして非常に注目されているものです。

おそらく彼らの合唱/音楽は、ハチのブンブンという羽音や流れる滝の音、風に揺れる木々の葉づれの音から影響されたもので、彼らの日常での体験に深く根ざした音楽は圧倒的な説得力を持っています。

このアルバムでもう一つの大きな要素はアメリカ人チェリスト/作曲家のデヴィッド・ダーリング。現代音楽の名門、独ECMからのリリースを行う偉大なチェリストですが、おそらく60年代にジャズに民族音楽の要素を取り入れた活動をしていた「ポール・ウィンター・コンソート」に参加していたことが、今回のアルバム制作の元になっていると思います。

チェロは人の声に近い楽器なので、デヴィッド・ダーリングの頭には、自分も合唱に加わらせてほしい、というシンプルにして新しく無邪気な希望/アイデアがあったのだろうと思います。このアルバムではよく聴くと、バックに台湾奥地の鳥や、葉擦れの音が一緒に録音され一層の一体感が感じられます。



2010年9月15日発売 pana003